MWMB


MWMB
2014.02.02

2月2日、ツーツーです。頭痛の日。
MWMBは、The mysterious world of the migraine brainの略です。
私が、夜、佐世保市内をwalkingしながら考えついたフレーズです。
片頭痛がどうして起こるのかわかっていません。また、発作性の片頭痛が、どうして、発作の頻度が増し、慢性の片頭痛になったりするのかもわかっていません。
片頭痛の治療は、トリプタン製剤やNSAIDsの使用、予防薬の使用などにより、一歩ずつ進んでいます。しかし、これらの薬剤が効かなかったり、慢性片頭痛や薬剤使用過多による頭痛などに移行したり、まだまだ難しいところがたくさんあります。どうしてこんなに難しいのでしょうか。
最近のfMRIを用いた研究から、片頭痛について新たな知見が発表されています。
この記念すべき日(2月2日)から、片頭痛の脳の不思議な世界を考えていきたいと思います。
ここではNoseda R、Burstein R、Craig AD、Olesen J、Goadsby PJらのの論文、The Headache 3rd editionのtextなどを参考にします。

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片頭痛-痛みの道筋①
2014.02.02

私は、頭痛外来を始める前までは、頭痛については、脳神経外科の専門医取得までに得た知識くらいでした。頭痛は、三叉神経の温痛覚の道筋を通るものと捉えていました。三叉神経第一枝⇒三叉神経脊髄路核⇒視床(VPM)⇒大脳皮質感覚野、位でしょうか。
頭痛外来を始め、頭痛に取り組んでから、それに若干解剖学的知識が加わりました。
本HPでは、以前に片頭痛の機序やCGRP受容体拮抗薬などのシェーマを紹介してきました。
MWMBでは、Noseda Rの論文やThe Headache 3rd editionのtextを参考に、もう少し深く考えたいと思います。
第一弾として、痛みの道筋①を示します。Noseda Rらは、2013年に優れた総説を発表しています。下の図はfig 1として紹介されたものです。CSDにより上矢状洞の硬膜に存在する神経が刺激され、その信号は三叉神経第1枝、三叉神経神経節から、脳幹(橋)に入り、三叉神経脊髄路核尾状亜核で二次ニューロンに至ります。そして、視床(VPM)を経て、三次ニューロンは一次体性感覚野(SⅠ)に至ります。

   

私なりに、理解を深めるためにシェーマを下図のように描いてみました。
このシェーマを基本にしてMWMBについて考えていきます。

   

痛みの要素には、①痛みの局在や強さを識別する弁別要素、②情動要素、③認知要素があるとされています。
この経路は、一次体性感覚野に至ります。この経路は、痛みの要素のうち、弁別要素に関わると考えられています。
この経路を遮断することが、治療の第一歩となります。
冠状断のイメージを追加します。

                           

出典文献を示します。

著者タイトル
1Noseda R, Burstein RMigraine pathophysiology. Pain 2013;154:S44-S53
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片頭痛-痛みの道筋②
2014.02.02

Noseda Rが示した図を再度みてみます。

   

赤い四角で囲んである視床で、経路は三つに分かれています。
ひとつは、上述したVPMを通る経路です。後の二つは、Po(posterior)とLP/LD(lateral posterior/dorsal)を通る経路です。つまり、VPMを通る経路の他にも道があることが示されています。
The Headache 3rd editionの教科書をみてみます。

視床では、VPMの通る経路の他に、別の二つの経路が示されています。
MD/SMからは、Cingulate/VLoに至っています。また、VMpo/POmからは、insulaに至っています。すなわち、帯状回、前頭前野、島皮質です。
痛みは、弁別、情動、認知の三要素からなりたっています。情動とは、喜怒哀楽、好き嫌いのことです。負の情動とは、不快、不安、恐怖、哀しみなどです。痛みがある時に、嫌だなあと思うことです。痛みがある時に沈んだ気持ちになることです。今度痛みが来るのは怖いなあと思うことです。ここでいう認知とは、痛みをこれまでの痛みの経験と比較して評価することとされています。
帯状回、前頭前野、島皮質は、情動や認知に関係する部位と考えられています。情動には、扁桃体なども関与します。各々については後述します。
痛みの道筋で、①主に弁別に携わる経路である視床VPMを介する経路、②その他に別の経路もあることを示しました。
痛みの道筋で、視床VPMを介する経路とは、異なる2経路をシェーマで示します。

   
   

冠状断のイメージを追加します。

                           

出典文献を示します。

著者タイトル
1Noseda R, Burstein RMigraine pathophysiology. Pain 2013;154:S44-S53
2Olesen J, Goadsby PJ, Messlinger KThe Headache Third edition. 2006; p98
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片頭痛-下行性疼痛抑制系
2014.02.02

前回までに、痛みの道筋の概略をみてきました。痛みの要素として、弁別、情動、認知の三要素があり、各々に道筋がありそうだ?ということです。
この他に、人間の生体には、痛みを抑制する力があります。下行性疼痛抑制系と呼ばれています。このシステムは、生体を痛みから守る働きがあります。この働きが鈍ると痛みを感じやすくなります。例えば、サッカー選手が、試合中に足を骨折していても、試合に集中しているため、痛みを感じず、試合が終わったら激しい痛みを感じたとかいう時も、この系が強く働いていると考えられます。
慢性片頭痛や、薬物乱用頭痛では、下行性疼痛抑制系の働きが鈍っているのではないかと考えられています。
下行性疼痛抑制系について、Noseda Rらの論文を参考にしてみます。

                    

赤い線は、PAG→RVM→SpVC示されて、最も有名な下行性疼痛抑制系の経路です。PAG(periaqueductal gray matter中脳水道周囲灰白質)、RVM(rostral ventromedial medulla)、SpVC(三叉神経脊髄路核尾側亜核)です。ここでの神経伝達物質はセロトニンと考えられています。
この他に二つの経路が知られています、ノルアドレナリンとドーパミンによる経路です。
ここでは、縫線核からの経路(神経伝達物質はセロトニン)および青斑核からの経路(神経伝達物質はノルアドレナリン)の2経路をシェーマで示します。

   
                    

冠状断のイメージを追加します。

出典文献を示します。

著者タイトル
1Noseda R, Burstein RMigraine pathophysiology. Pain 2013;154:S44-S53
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片頭痛-辺縁系
2014.02.02

辺縁系。あまり勉強したことはありません。脳神経外科専門医試験の時、強引に記憶したのみです。教科書をみても、あらゆる分野でさまざまな記載がされています。
最初に、2012年の(脳と神経10月号)の福武敏夫先生と河村満先生の対談を参考に、辺縁系とはどんな部位をさすのかみてみます。①最初にブローカが指摘した、脳梁を取り囲む領域:帯状回、海馬傍回、梁下回、海馬が記載されています。②次に有名な パペッツの回路が挙げられています。海馬体-脳弓-乳頭体-視床前核-帯状回-海馬傍回-嗅内皮質-海馬という回路です。③次はヤコブレフの回路です。前頭葉眼窩皮質-側頭葉極-扁桃体-視床背内側核-前頭葉眼窩皮質です。まとめとして、海馬、海馬傍回、扁桃体、中隔核、乳頭体、嗅皮質、側坐核、視床があり、視床下部は含まれたり、含まれなかったり、だそうです。
他の教科書をみると島皮質も入っているようです。脳幹まで入れる考えもあるそうです。その他に手綱核、脚間核などの記載もみられます。
既に私の脳は降参という感じです。


片頭痛と辺縁系。やっと、タイトルまで到達しました。帯状回、島皮質、扁桃体、海馬などを中心に触れていきたいと思います。
参考にする文献は、2012年、Maizels Mらが記したBeyond Neurovascular: Migraine as a Dysfunctional Neurolimbic Pain Networkです。タイトルが興味深いですね。三叉神経血管説を超えて:辺縁系の疼痛ネットワークの障害として片頭痛をとらえる でしょうか。

                        

論文の要約です。
片頭痛の説はいろいろあります。
最近、脳幹における痛みを調節する回路が着目されてきました。特にPAG(中脳水道周囲灰白質)は重要な役割を果たし、migraine generatorすなわり片頭痛の発生部位として注目されました。現在では一歩進み、pain matrixという概念も生まれています。
さらにもう一歩進みました。最近の片頭痛における脳機能画像の進歩により、脳幹における痛みを調節する回路と辺縁系の回路との結びつきが重要と考えられるようになってきました。脳幹の回路と辺縁系の回路との結びつきは、双方向性で、お互いに影響し、痛みと気分(情動)に関係します。
片頭痛において、辺縁系を考察することは、a)片頭痛がおこる機序の解明について、b)片頭痛発作が生じていない間欠期に出現する異常について、c)片頭痛の慢性化について、d)共存症について、などの解明に結びつくのではないかと考えられています。


論文の中で、片頭痛における辺縁系のペインネットワークの機能障害についていくつかの論文を紹介しています。
①Weillerらの初期のPET研究。
片頭痛発作中に、PAGとACCが活性化されている。そして、スマトリプタン使用後に症状が消失してもPAGの活性化は持続しており、PAGがmigraine generatorではないかと考えられています。ACCの活性化は、痛みに対する情動反応と考えられています。

②MaineroのfMRIの報告。
これでは片頭痛患者の発作間欠期のペインネットワークについて述べています。
1)片頭痛患者では、PAGと視床、後部頭頂葉、anterior insula(前部島皮質)、体性感覚野との結びつきが強い。
2)発作が多くなると、PAGとanterior insula(前部島皮質)、nucl cineiformis、hypothalamus(視床下部)との結びつきは強くなります、しかし、PAGとPFC(前頭前野)、ACC(前部帯状回)、amygdala(扁桃体)の結びつきは弱くなります(下図参照)。

                        

3)アロディニアを伴う片頭痛の患者では、PAG、PFC、ACC、anterior insula(前部島皮質)の結びつきは弱くなります。

③別の報告では、発作頻度の多い片頭痛の患者では、発作頻度の少ない片頭痛の患者と比較すると、やはり、PAGと前部帯状回と後部帯状回、海馬、被殻、後部島皮質との結びつきが減少することが報告されています。

④片頭痛におけるACCについて再評価がなされています。Weillerの報告では、PAGがmigraine generator、ACCは痛みに対する情動の結果と考えられていました。しかし、ACC-PAGのtop-downとして作用が考えられ、ACC-PAG-RVMが重要な痛みの調整系として考えられるようになりました。すなわちWeillerの研究結果である、ACCの活性増加も、疼痛抑制系の賦活化をあらわしているものではないかと考えられるようになってきました。

⇒辺縁系が片頭痛に関係しているようだということはわかりました。そして、発作の頻度、アロディニアの有無で、発作間欠期の各々の結びつきが変化することが示されました。特にPAGとACC、PAGとanterior insulaの結びつきが注目されているようです。

                        

PAGと辺縁系にネットワークが形成されている。これが痛みの情動部分や疼痛抑制系に関係してることが推測されますが、まだよくわかりません。


この論文を読んで感じたこと:痛ければ、自己の疼痛抑制系が活性化される。ACCからのtop downでPAGが活性化される。次第に慣れて、賦活化されなくなる?。そうすると、疼痛抑制系が働かなくなる。⇒痛みが慢性化する。そんな単純な筈はありません。
頭痛以外の分野では、慢性疼痛に対する認識が変化しています。

難しいので、次の四部位について、疼痛に関して一般的なことに簡単に示します。
加藤総夫先生の論文を参考にします。
前頭前野:意識の流れやワーキング・メモリーとしての役割
扁桃体:有害情報によって成立する恐怖学習などの中枢
前部帯状回:報酬予測・意思決定・共感や情動といった認知機能に広く関与
島皮質:痛みや認知的体験や喜怒哀楽・不快感・恐怖などの感情体験に関与

出典文献を示します。

著者タイトル
1Maizels MBeyond Neurovascular:Migraine as a Dysfunctional Neurolimbic Pain Network.
Headache 2012;52:1553-1565
2Marinero CAltered fMRI resting-state connectivity in PAG networks in migraine.
Ann 2011;70:838-845
3加藤総夫痛みと負情動-痛みの苦痛と優先的「割り込み」仮説
ペインクリニック 2013;34:1059-1067

つづく

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片頭痛-視床下部
2014.02.02

作成予定

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片頭痛-脳幹
2014.02.02

作成予定

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片頭痛-基底核
2014.06.02更新-2014.02.02

大脳基底核は、運動の企画や実行を担う終脳の皮質下核とされています。
大脳基底核は、被殻、尾状核、淡蒼球で形成されます。被殻と尾状核は線条体と呼ばれ、被殻と淡蒼球はレンズ核と呼ばれます。
大脳基底核は、主に運動の企画や実行を担っており、片頭痛と大脳基底核は、無関係のようにみえます。しかし、最近、片頭痛と大脳基底核についても注目されています。論文がいくつかあります。かなり、難解なので、わかる範囲で紹介します。

1)Migraine attacks the Basal ganglia. Molecular Pain 2011: 7;71 Maleki N, Bursein R
発作性片頭痛が頻度を増し、持続時間が長くなり、痛みの程度が強くなり、慢性片頭痛に移行する場合があります。発作性片頭痛が慢性片頭痛に移行する機序は不明です。
一方、大脳基底核は、大脳皮質や視床から入力され、大脳基底核→視床→大脳皮質へ、さらに大脳基底核へ戻ってくるというループを形成し、運動・精神状態・痛みなどにも関係していることが知られています。皮質と視床の情報調節、痛み(感覚・感情・認知)の情報調節に関与していると考えられています。
この論文では、頻度の多い片頭痛と頻度の少ない片頭痛患者で、fMRIを用いて、大脳基底核について比較検討しています。
結果:痛み(熱)に対する反応は、①LF(頻度の少ない片頭痛)の患者に対してHF(頻度の多い片頭痛)の患者では、尾状核、被殻、淡蒼球で反応が低かったことを示しています。

   

しかしながら、②HFの患者では、両側の尾状核の灰白質の体積が増加していたことが示されました。
③Functional connectivity analysisにおいて両者に相違があったことが示されました。
以前、筆者らの施設では、片頭痛に関係する三叉神経血管系に関する実験を行っています。片頭痛は、三叉神経⇒三叉神経脊髄路核⇒視床⇒大脳皮質の経路で形成されます。
その報告の中で、視床の硬膜感受性ニューロンが、VPMの他にPo核、LD/LP核にも存在し、各々が広範大脳皮質に投射していたことを示しています。この中で、尾状核に至る経路を報告しています。 これらの結果と上記①、②、③の結果から、大脳基底核は、片頭痛の病態に重要な役割を果たしているのではないか考察しています。

2)Hypothalamic and basal ganglia projections to the posterior thalamus: possible role in modulation of migraine headache and photophobia. Neuroscience 2013:248;359-368, 2013
こちらの論文は、大脳基底核の他に視床下部についても触れられています。視床下部については別にあつかい、ここでは大脳基底核についてのみ紹介します。
この論文では、視床のPo核とLP核に大脳基底核のDBBからの入力、視床下部(A11、VMH、TMN)からの入力が存在することを示しています。この事から、片頭痛におけるこれらの領域の役割について考察しています。大脳基底核のDBBは、睡眠に関与することが知られています。片頭痛が早朝に起きることが多い事から、大脳基底核のDBBが片頭痛と睡眠に関わっているのではないかと考察しています。

理解を深めるためにシェーマを描きました。硬膜からの信号が三叉神経脊髄路核を経て視床に到達します。
ここに大脳基底核(DBB)から視床にも入力されていて、上記論文では、DBBは睡眠に関係している部分なので、片頭痛と睡眠とに関わっているのではないかということです。

   

冠状断のイメージを追加します。

                               
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片頭痛-光過敏
2014.06.02

片頭痛には、光過敏 photophobiaという言葉があります。
片頭痛に悩まされている方は、よく、頭痛がある時には眩しい光が嫌だとか、テレビの画面が嫌だとか、点滅する車のテールライトが気になるとか、窓から入ってくる光が嫌だとか、炎天下の運動会では具合が悪くなるとか、光に対する過敏性を訴える方が多くいらっしゃいます。
また、片頭痛の時には光がいつもより眩しく感じるとか、いつもとみえ方が異なるとか表現される患者様もいらっしゃいます。光によって眼窩付近や目の奥に痛みを感じるという訴えもよく耳にします。
このような病態をmigraine-type photophobiaとして、報告した興味深い論文があるので紹介します。
この論文では、①光によって頭痛が悪化、②光に対する異常感覚、③光によって眼窩付近の痛みが出現、以上の三点についてその機序を示しています。

①光によって頭痛が悪化
光によって頭痛が増悪される患者様はたくさんいらっしゃいます。
片頭痛では、硬膜、三叉神経血管系からの侵害刺激が視床、大脳皮質などに到達する軽度が重要と考えられています。
Noseda R、Burstein Rらは、1)光刺激が視床後角や視床枕に存在する硬膜感受性ニューロンの活動を調節すること、2)これらの硬膜感受性ニューロンは、二次性感覚野、運動野、連合野、視覚野など大脳皮質に広く投射していることを報告しています。
これのことから、硬膜、三叉神経血管系からの侵害刺激が視床、大脳皮質へ至る片頭痛がおこる道筋(赤い線)で、光刺激が視床(LP/Pul)の硬膜感受性神経を刺激し(青い線)、片頭痛を増悪するのではないかと考えています。

網膜細胞には、画像を形成する網膜細胞と画像を形成せず光を感じる網膜細胞があります。画像を形成せず光を感じる網膜細胞が、光刺激による頭痛増悪に重要な役割を果たしていると考えられています。その理由の一つとして、両方の網膜細胞に障害があるケースでは、いわゆる光過敏症はないのに対して、画像を形成する網膜細胞が障害され、画像を形成せず光を感じる網膜細胞は障害されていない場合では、片頭痛の光過敏症があることを挙げています。

シェーマを示します。

   

画像を形成せず光を感じる網膜細胞は、光受容体メラノプシンを含有します。その経路は、画像を形成する網膜細胞の経路と異なり、視神経を経て、suprachiasmatic nuc、
Intergeniculate leaflet、olivary pretectal nucleusに投射します。これらは、光過敏ばかりではなく、片頭痛は睡眠などとも関わっていることに何等か役割を果たしていることが考えられています。Maleki Nらの報告を紹介します。

Maleki Nらの報告を紹介します。図aは、画像を形成する視機能の道筋です。網膜から外側膝状体を経て、後頭葉視覚野(V1)に到達します。 図bは、画像を形成せずに光を感じる道筋です。点線で示されえいるように後頭葉には到達せず、上視交叉核(SCN)、手綱(Habenuka)、松果体(pineal body)に到達します

②光に対する異常感覚
片頭痛発作時に、光がいつもより眩しく感じるなどと表現される患者様がいらっしゃいます。
①で示しましたように、Noseda R、Burstein Rらは、1)光刺激が視床後角や視床枕に存在する硬膜感受性ニューロンの活動を調節すること、2)これらの硬膜感受性ニューロンは、二次性感覚野、運動野、連合野、視覚野など大脳皮質に広く投射していることを報告しています。硬膜、三叉神経血管系からの侵害刺激が視床(LP/Pul)へ、そして視覚野(V1/V2)へ至る道筋で、光刺激が視床(LP/Pul)の硬膜感受性神経を刺激し、視覚野を刺激するという考えです。

シェーマを示します。

   

③光によって眼窩付近の痛みが出現
光り刺激が視神経を通りOPTへ至り、上唾液核を刺激します(青い線)。上唾液核は、副交感神経の中枢の一つです。ここから、神経は翼口蓋神経節に至り、眼窩や網膜付近の三叉神経血管系を刺激します(緑の線)。ここから、三叉神経を経て痛み中枢に到達します(オレンジの線)。

シェーマを示します。

   

出典文献を示します。

著者タイトル
1Noseda R, Burstein RAdvances in understanding the mechanisms of migraine-type photophobia.
Curr pin Neurol 2011; 24:197-202
2 Maleki N.Direct Optic Nerve Pulvinar Connections defined by Diffusion MR Tractography in Humans: Implications for Photophobia. Hum Brain Mapp. 2012; 33: 75–88
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片頭痛-アロディニア
2014.02.02

作成予定

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片頭痛-MOH
2014.02.02

作成予定

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片頭痛-RCVS/POTS
2014.02.02

作成予定

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片頭痛-視床(神経伝達物質)
2015.02.02

Noseda Rが、2014年に興味深い論文を発表しました。この分野での集大成といってもいいのではないでしょうか。
片頭痛には、いろいろな誘発因子/修飾因子があります。月経、食品、ライフスタイル(ストレス、精神的緊張、欠食、睡眠不足や睡眠過多、疲労)、環境因子(天候の変化、気圧の変化、台風、雷、光、音、運動、高地)などが挙げられます。逆に考えるとこれらを避けることができれば、片頭痛が避けることができる可能性があります。
Noseda Rは、この論文で、視床に存在する三叉神経血管系の神経とさまざまな神経伝達物質との関係を示し、片頭痛を誘発する因子・修飾する因子について明快に解説しました。簡単に紹介します。

   

Aは、これまでも何度も紹介してきたおなじみの図です。この図には、いろいろな情報が示されています。Bでは、Aで示した三叉神経血管系の視床に存在する神経にさまざまな神経伝達物質が関与してくることを示し、それらが片頭痛の誘発因子・修飾因子となっていることを示しています。各々をみていきます。

赤:グルタミン酸
片頭痛の痛みの道筋を示すものとして紹介されています。
硬膜の知覚が、三叉神経脊髄路核尾状亜核で、二次ニューロンに伝えられ視床に到達します。二次ニューロンから視床への伝達物質がグルタミン酸と考えられています。

茶:ドーパミン
片頭痛では、ドーパミンは、視床下部を介して欠伸や嘔気など予兆を引き起こす重要な物質として考えられてきました。最近は、視床下部を介して、三叉神経脊髄路核尾側亜核の後角(延髄の後角と呼ばれています)にも、影響を与えていると考えられています。視床下部内側に存在するA11 ドーパミン細胞が、延髄後角および視床の三叉神経血管系の神経に関与していることが証明されました。 ドーパミン神経終末部でのコカインの選択的取り込みなども考慮すると、視床におけるドーパミンの関与は、薬物依存、感情、dicision makingなどに関与し、ひいては薬剤使用過多による頭痛(MOH)にも関与しているものと考えられています。ドーパミンを介して、ネガティブな考え、 怒り・イライラ感のコントロール、認知作業などによって、片頭痛に関与すると考えられます。

緑:セロトニン
セロトニンは、片頭痛の病態生理に強く関与してきていると考えられてきました。 この結果、5HT1B/1D 受容体アゴニスト(トリプタン)が開発され、片頭痛の治療に用いられるようになり、片頭痛の治療が一変しました。 Noseda Rらの研究では、セロトニンは視床と大脳皮質間の三叉神経血管系で抑制効果を有し、5HT1アゴニストも三叉神経血管系視床神経に抑制効果を示しました(この抑制効果は、視床より前段階の神経で引き起こされると考えられています)。 セロトニンは、ストレス、不安、抑うつ、睡眠、食欲、学習などと密接にかかわっており、これらの生理的状態と片頭痛が密接にかかわっていると考えられます。

青:ノルアドレナリン
  片頭痛においてノルアドレナリンは、視床神経を興奮させます。中枢では三叉神経血管系神経を興奮させ、末梢では高血圧を引き起こします。β1受容体拮抗剤が、視床の三叉神経血管系神経を抑制し、片頭痛予防薬として使用されています。

オレンジ:ヒスタミン
  片頭痛において、ヒスタミンはH1受容体を介して血管を拡張させ、その結果、遅発性の頭痛を引き起こすものと考えられてきました。 一方、ヒスタミンの三叉神経血管系の視床神経への影響は、H1受容体を介して遅発性脱分極を引き起こし、burstからtonicの状態へ変化させると考えられます。これは、覚醒と睡眠に大きな役割があります。つまり、睡眠によって頭痛が軽快することに、重要な役割を果たしている可能性があります。ヒスタミンはこの部分に関与していると考えられています。

紫:MCH  Melanine Concentrating Hormone
視床下部から生じるMCH systemは、GABAを含有します。これは、エネルギー消費、覚醒、運動、性、自律神経系の修飾/抑制に関与すると考えられています。 食事後の血糖上昇により、MCHニューロンは活性化され、大脳皮質、皮質下、脳幹、脊髄でGABAをリリースし、睡眠を誘導したり、摂食を中止すると考えられています。 このシステムは、最近まで、片頭痛の病態には関与しないものと考えられてきましたが、食事や睡眠が片頭痛に密接に関与していると考えられるようになり、見直されてきました。摂食により、片頭痛が改善する機序は、血糖上昇により視床下部MCHニューロンが活性化され、視床三叉神経血管系を抑制すると考えられています。逆に、食事をとらないと片頭痛が惹起されるのは、MCHによるものと推測されています。欠食により血糖がさがり、MCH系を抑制され、GABA系が減少します。GABA系の抑制により、硬膜からの三叉神経血管系が興奮し、片頭痛が引き起こされると考えられています。

黒:オレキシン
  オレキシンは外側視床下部より大脳皮質、視床、脳幹、脊髄や他の視床下部に投射しています。オレキシンAとオレキシンBが存在し、各々同じ遺伝子から生成されます。受容体は、1と2が存在し、受容体1はオレキシンAに選択的に、受容体2はオレキシンAとオレキシンBに非選択的に結合します。摂食、覚醒や交感神経系を介する発熱・心拍数・血圧に関与すると考えられています。MCHとは逆に、血糖が下降するとオレキシン神経は活性化されます。そして摂食、覚醒状態を引き起こします。オレキシンは、睡眠から覚醒状態を創り出します。食事によって片頭痛が減るのは、MCHによるGABAがリリースさせるばかりでなく、オレキシンが抑制されることも関係していると考えられています。逆に欠食により片頭痛が惹起されるのは、血糖が低下し、オレキシン神経が活性化されるためと考えられます。

CGRP
片頭痛の病態で、CGRPが重要な役割を果たしていることは、これまで多くの研究がなされてきました。CGRP受容体が視床VPMに存在しCGRP受容体拮抗薬が視床三叉神経血管系を抑制することも示されています。

出典文献を示します。

著者タイトル
1Noseda RNeurochemical pathways that converge on thalamic trigeminovascular neurons: potential substrate for modulation of migraine by sleep, food intake, stress and anxiety.PLoS One 2014 Aug4;9(8):e103929.doi:10.1371
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